北海道でIR誘致に反対の声強まる、「2028年の再検討を前に揺れる地域社会」

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北海道で統合型リゾート(IR)の誘致を巡る議論が再び注目を集めています。2024年4月10日、北海道臨床心理士会や北海道子どもの虐待防止協会など5つの地域団体が、鈴木直道知事に対してIR誘致に反対する要請書を提出しました。これらの団体は、カジノが地域に与える影響を強く懸念しており、特にギャンブル依存症の増加や子どもたちへの悪影響を指摘しています。

北海道でのIR誘致を巡る動きは、2019年に一度大きな転機を迎えています。当時、苫小牧市がIRの誘致先候補地として注目されていましたが、鈴木知事は「コロナの拡大でIR事業者の経営状況にも影響が出ている。検討期間を確保できない状況」との理由から誘致の見送りを決定しました。北海道の豊かな自然と共生する形でのIR誘致が難しいという判断が背景にあり、特に候補地である苫小牧市の環境保護の重要性が指摘されていたことが、見送りの大きな要因です。

その後、鈴木知事は2028年を目途に再度IR誘致の可能性を検討する考えを示しました。再検討の動きは、北海道内の経済状況や観光業の発展を見据えたものであり、カジノが観光資源として活用できる可能性を探る意図があります。IRは、カジノのみならずホテルや商業施設、国際会議場(MICE施設)などを備えた複合的な観光施設であり、観光業にとって大きな経済的なメリットをもたらすと期待されています。2028年の再検討に向け、地域の経済発展や雇用創出を見据えた前向きな意見もある一方で、依然としてギャンブル依存症や治安への影響を懸念する声は根強く残ったままです。

2023年12月には、北海道議会の最大会派である「自民党・道民会議」の一部議員が中心となり、IR誘致に向けた勉強会が開かれました。この勉強会では、千歳市への半導体製造企業の進出など地域経済の変化も踏まえ、長期的な視点からIR誘致を検討するべきだとの意見が出されました。勉強会での議論では、カジノの経済効果を北海道全体に波及させる可能性や、地域住民へのメリットとデメリットのバランスを取る必要性を強調。しかし、こうした動きは地域住民の間で賛否を呼んでおり、特に医療や福祉の観点からは、IR誘致がもたらすリスクを警戒する意見が根強く存在します。

今後も2028年の再検討を見据え、地域の声や社会的な影響を慎重に見極めた上での判断が求められるでしょう。地域社会の福祉と経済のバランスをどのように保つのか、そしてIR誘致が地域の発展と共存できる形で実現できるかが、今後の北海道における重要な課題となっています。

【参考】
【朝日新聞】北海道、IR断念 候補地の自然環境に配慮
【朝日新聞】道議会自民会派有志がIR勉強会 誘致に向け議論進める
【朝日新聞】IR誘致めぐり、北海道児童青年精神保健学会など反対申し入れ
【iagJAPAN】北海道IR誘致再挑戦は7年後 苫小牧市長「非常に残念」
【弁護士JPニュース】北海道カジノ含む “統合型リゾート施設(IR)”計画断念から再検討へ? 「誘致反対」北海道の5団体が鈴木直道知事に要請書

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